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【指南315】

2014年9月19日

クリスマスに届いた宝物???

営業に対する意識を少しずつ変えていった太田さん。半年後ようやく初受注を決め、小さな広告をポツリポツリと任されるようになりました。でも、それは実力ではなく、たまたまラッキーだったに過ぎない。太田さんがそう気付いたのは、毎週トップの受注を続ける同僚のテレアポを耳にしたのがきっかけでした。

 

「彼女は、お客さまの身の上相談に乗っていました。従業員が定着しないとか、ライバル店に押されてるとか。そうやって困り事を聞き出したうえで、自分にはこんなことができますと提案しているわけです。一方の私はといえば、『子供を養わないといけない』『ここで失敗はできない』という焦りが先走って、『広告スペースを売ろう売ろう』という自分本位のスタンスでした」

 

そんな太田さんの営業スタイルを一変させたのが、引き継ぎで担当した、小さな喫茶店との出会いでした。

 

「それまでの広告では店の特徴を出せていない気がして、マスターからいろんなお話をヒアリングしていたんです。毎週3回は通っていました。するとある日『じつはこんなレシピを研究してるんです』と、一切れのスイーツを差し出してくれました。営業回りで疲れていますから、甘いものはありがたいなという、軽い気持ちで口に入れたんですよ(笑)。すると、それはもう、絶品だったんです」

 

太田さんは営業という立場ではなく、一人の若い女性として純粋に感動していました。「マスター、なんですか、これ?」「ガトーショコラだけど、美味しい?」「ええ! これをお店の看板商品に育てましょうよ。ぜひお手伝いさせてください」。太田さんに目的意識が芽生えた瞬間でした。「でも、うちの店には派手に広告を打つお金はないよ」。マスターが消極的なのも無理ありません。客単価500円程度で客足も伸びず、いつ閉店してもおかしくないような状況だったのです。そんな逆境にあっても、コツコツと研究を重ねているマスターの姿が、まさに自分と重なり合うのを太田さんは感じました。

 

「いまはどん底だけど、このままでは終わりたくない。マスターも私も同じなんだなと……。それまでの自分を縛っていた『失敗して嫌われたくないからクロージングしない』という躊躇は消えて、『これなら絶対に勝てますから、打って出ましょう。私を信じてください!』という言葉が、自然に口をついて出ていました。お客さまへの〈共感〉と成功への〈思い込み〉があって初めて、情熱と自信を持って行動できるのだと気付かされたんです」

 

太田さんとマスターの挑戦は、広告提案時の仮説を超える大成功をおさめました。ガトーショコラは、口コミで広まり、芸能人がテレビで紹介し、50か国以上の駐日大使や歴代の外務大臣にもお届けするまでになったのです。じつはマスターは以前、有名ホテルでイタリアンの修行を積んでいました。そのことを聞いていた太田さんは、ガトーショコラを軸としたコース料理の展開も提案していました。

 

「夜の集客もできるようになって、客単価が約10倍になったんです。つまり、1つの商品のプロモーションを提案しただけで、お客さまのビジネスモデル自体が変わってしまう。営業ってなんてクリエイティブな仕事なんだろう! 震えるほどの体験になりました」

 

その年のクリスマスイブのことです。オフィスで仕事をしている太田さんの元に、1通のファクスが届きます。「あなたに出会えたおかげで、うちはこんなに繁盛する店に変わりました。太田さん、ありがとう」。マスターからの感謝の言葉に、太田さんは涙があふれて止まりませんでした。営業に出会えて良かった。私はなんていい職業に就いたのだろう。この仕事が、太田さんのターニングポイントになったのです。

【指南315】

(写真)運命の出会いとなった「ケンズカフェ東京」のガトーショコラ。もともと女性には、営業に有利な6つの感性があると唱える太田さん。お客さまの心をつかみ、安心感を与える〈共感性〉。味方意識を芽生えさせる〈協調性〉。仲良くなり、絆を強固にする〈親和性〉。気配りや心遣い、洞察力につながる〈繊細性〉。相手のためにこうしてあげたいと尽力する〈母性〉。コツコツと真面目に積み重ねる〈勤勉性〉。もし太田さんがコツコツと通わずに仲良くなっていなかったら、マスターはガトーショコラを差し出していなかったかもしれませんね。