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【指南314】

2014年9月17日

枯れている花は、買われない???

太田さんの営業人生は、けっして順風満帆だったわけではありません。そもそも、スタート前から苦難の連続でした。大学三年のときに学生結婚し、男の子を授かります。育児で就職活動もままならず、ようやくこぎつけた面接でも「子供がいる人はね……」と落とされる連続でした。

 

「そんな私を契約社員として拾ってくださったのがリクルートだったんです。でも、営業という仕事に馴染めず、結果が出ないまま、わずか半年で逃げるように辞めてしまいました。その後は、知人に紹介された法律事務所で、時給900円のアルバイトを始めました。でも、子供がしょっちゅう熱を出して、保育園に呼び出されるんです。ある日、職場のボスから『お前は早退や欠勤が多過ぎだ。明日から来なくていい』と解雇される。そんなことの繰り返しでした」

 

26歳のときに離婚。右手にボストンバッグ一つ、左手に5歳の子供の手を引いて家を出て、母子2人六畳一間での生活が始まりました。アルバイトを転々として食いつないでいたある日、太田さんはリクルート時代の上司と、街でバッタリ遭遇します。「こんど、新しいフリーペーパーを創刊するんだ。どうだ、戻って来るか?」。その上司は、太田さんの瞳に、以前にはなかった〈覚悟〉を感じ、チャンスを与えてくれたのです。

 

「それでも、私は期待に応えることがなかなかできませんでした。フリーペーパーの創刊スタッフというと聞こえはいいのですけど、『飲食店や美容院に飛び込み営業して広告をとってこい』という話です。もともと人見知りで引っ込み思案の私は、敷居をまたげないまま飲食店ビルのエレベータホールでモジモジしたり、邪険に断られて階段の踊り場でメソメソ泣いたりしたこともありました」

 

だけど、子供を路頭に迷わせるわけにはいかない。自分を奮い立たせ、飛び込み営業を続けた太田さん。同僚の営業マンが50軒飛び込んだと聞くと51軒、100軒テレアポしたと聞くと101軒と、男勝りに一心不乱にセールスを続けます。しかし、半年経っても契約はゼロでした。

 

「なんど通っても断られていたお店で、店長さんにこう言われたんです。『ねえ、太田さん、いっぺん自分の姿を鏡で見てごらん』『えっ、どういうことですか?』『いいから、そこの鏡、見てみなよ』と。……うわっ、私って、なんて醜いんだろうと、驚きました。髪はボサボサ、スーツはヨレヨレ、カバンの中はグチャグチャ。なにより、覇気がありません。売れないので悲壮感が漂って、表情が死んでいるんです。『太田さんさ、女性営業っていうのは、花のように周りを明るくするものなんじゃないの。こんな枯れた営業からは、誰もなにも買わないよ』と、店長さんにバッサリ切り捨てられました」

 

その言葉にハッとさせられた太田さんは、まず外見だけでも変えようと決めました。

 

「メークをきちんとすることも含めて、身だしなみをしっかりしよう! いつも見られている緊張感を持ちながらも、顔全体で笑顔をつくろう! 姿の見えないテレアポでも、断られ続けたときこそ、ワントーン上げた明るい声で話そう! そういう形から入ったんです。幸せだから笑うんじゃなくて、笑うから幸せになれると言いますよね。笑顔・声・外見を整えていくと、気持ちも高まります。『私はどうせ今日も断られる』ではなくて、『このお客さんを私の提案で絶対に幸せする』という意識に、少しずつ変わっていったんです」

【指南314】

(写真)数多くのトップセールスウーマンと接してきた太田さんは、彼女たちには共通点があると言います。「それは、『身体の先』にまで注意を払っていることです。爪先は整えられ、つま先まで靴は磨かれ、髪の先は不用意に顔にかかったりしていません。マナーや身だしなみというのは自分の好みではなく、失礼がないように、心地よく感じてもらえるように……という心遣い。営業の基本である『相手のために』という意識を高めることにつながるんです」